【節税】いくら安くなるの?役員社宅の効果について具体的解説!
前回社宅契約にすると、支払賃料の1~3割の個人負担で借りることが出来る、ということを書かせていただきました。(以下の記事も参考にしてください)
今回はさらに一歩踏み込みまして、社宅契約にすることで具体的にどの程度節税になるのか、ということを実際にあった例を参考に検証していきたいと思います。
社宅契約にすることのメリット
まず、社宅契約にすることの金銭的なメリットとしては以下の点があります。
1.課税所得を下げることが出来るため、所得税・住民税の負担が減る
通常であれば、役員報酬を支給して、税金を課税された後の可処分所得から家賃を支払うことになります。これを社宅にして会社から家賃を支払うことで、役員報酬を支給せずに家賃を払うことが出来るため、所得税や住民税を減らすことが出来ます。(一定の本人負担額は徴収する必要があります)
2.月額報酬が下がるため、社会保険料の負担が減る
1と同様に役員報酬を支給しないため標準報酬月額も下がり、社会保険料も減らすことが出来ます。
ただし、社会保険については一定額が現物給与として報酬扱いとなるため注意が必要です。(後述します)
3.仲介手数料や礼金・更新料を法人の経費とすることが出来る
仲介手数料や礼金などの初期費用や更新料について、法人の経費とすることが可能です。なお、礼金・更新料は20万円以上の場合には繰延資産扱いとなり、契約期間等で均等償却する必要があります。
この1と2について、具体的な数字で検証していきたいと思います。
具体例
検証するにあたり、前提条件は以下のとおりに設定します。
場所 | 東京都 |
役員報酬(月額) | 100万円 |
所得控除(基礎控除のみ) | 48万円 |
法人の役員報酬支給前の利益 | 2,000万円 |
専有面積 | 76㎡ |
間取り | リビング15畳、洋室7畳×3 |
支払家賃 | 26万円 |
通常の賃貸料の額 | 3.3万円 |
役員報酬を月100万円取っている50歳の社長がいるのですが、今回その社長が上記の条件の自宅を借りることになりました。
その場合に役員報酬を上乗せして支給する場合(100万円+26万円=126万円)と、社宅契約をする場合とに分けて、どの程度金額に差額が出るのかを検証してみたいと思います。
1.個人
まずは役員個人がどの程度変わってくるのかを見ていきます。
結論をまとめると以下のとおりとなります。
区分 | 上乗せ | 社宅 | 差額 |
給与収入 | 1,512万円 | 1,200万円 | △312万円 |
給与所得 | 1,317万円 | 1,005万円 | △312万円 |
社会保険料 | 159万円 | 146万円 | △12万円 |
基礎控除 | 48万円 | 48万円 | 0万円 |
課税所得 | 1,110万円 | 811万円 | △300万円 |
所得税 | 217万円 | 125万円 | △92万円 |
住民税 | 112万円 | 82万円 | △30万円 |
社会保険料 | 159万円 | 146万円 | △12万円 |
支払家賃 | 312万円 | 40万円 | △272万円 |
差引手元資金 | 713万円 | 807万円 | +95万円 |
こちらの計算ですと、家賃分を役員報酬に上乗せして支払うよりも、社宅契約をした方が個人の手残り金は95万円ほど増える計算となります。
これは、役員報酬を上乗せしないことにより、所得税・住民税・社会保険料の負担が少なくなることが要因です。
2.法人
次に、法人側について見ていきたいと思います。
区分 | 上乗せ | 社宅 | 差額 |
支給前利益 | 2,000万円 | 2,000万円 | 0万円 |
役員報酬 | 1,512万円 | 1,200万円 | △312万円 |
社会保険料 | 161万円 | 149万円 | △12万円 |
支払家賃 | 0万円 | 312万円 | 312万円 |
受取家賃 | 0万円 | 40万円 | 40万円 |
税引き前利益 | 327万円 | 379万円 | 52万円 |
法人税等合計 | 80万円 | 92万円 | 12万円 |
税引き後利益 | 246万円 | 287万円 | +40万円 |
法人についても、社宅契約の方が手残り金が40万円ほど増える計算となっています。
これは、役員報酬が下がることで法人負担の社会保険料も下がること、また、役員から家賃を受け取ることが要因です。
3.まとめ
上記のとおり、役員報酬として支払うよりも社宅契約をした方が、トータル135万円も手残りが増えることになります。(役員個人+95万円、法人+40万円)
個人・法人ともに手残りが増えるというのは少し不思議な感じがしますね。ただ実際に計算してみるとこれだけ違うということが分かりました。
今の時代、中々節税というものが難しくなってきていますが、これは通達にも書かれた通りの処理をしているだけですので何ら問題はありません。
まだご自宅を個人契約とされている方は、ぜひこの機会に社宅契約をすることを検討してみてはいかがでしょうか。