【必見】税務上の「期日」の考え方。経過する日?した日?休日の場合は?

税理士にとっては、期日というのはすごく大事なものです。

例えば、法人税申告が期限に間に合わなければ無申告加算税が付きますし、源泉所得税の納付期限に遅れれば不納付加算税が付きます。

また、期日までに簡易課税制度選択届出書を提出していなければ簡易課税を選択することが出来ませんし、事前確定届出給与の届出期限に間に合わなければ、役員賞与の支給もすることが出来ません。

期限に間に合わずに納税者に負担を強いることになってしまった場合には、損害賠償を求められるケースもあります。

もちろん期日に余裕を持った仕事をすることが大事なのは大前提ですが、それでも期日がどのように定義されているかはしっかりと把握をしておきたいところです。

しかし、普段はそこまで税法でどう定められているのかを確認することもないため、定義が曖昧になっている方も多いかと思います。

そこでここでは、税務上の期日の考え方についてまとめていきたいと思います。

経過する日、経過した日

税法上で期日というと、「〇月を経過する日」「〇月を経過した日」という言葉がよく出てきますが、これらは税法に限らず、各種法律一律同じ考え方によります。

具体的には「経過する日」は、期間が満了する日を指し、「経過した日」は、期間が満了する日の翌日を指します。

期間が満了する日とは、月初から始まった場合にはその月末、月中から始まった場合には翌月の応当日の前日です。

応当日とは起算日が15日であれば、その翌月15日を指しますので、応当日の前日となるとそこから1日引いた14日になります。

具体的には次のようになります。

起算日が1月1日の場合

  • 1月を経過する日→1月31日
  • 1月を経過した日→2月1日

起算日が1月15日の場合

  • 1月を経過する日→2月14日
  • 1月を経過した日→2月15日

おそらくここまではご存じの方も多いはずです。

では実際に、事前確定届出給与に関する届出書の届出期限を例にして見ていきましょう。

事前確定届出給与に関する届出書の提出期限

事前確定届出給与について、条文上では下記のように期限が規定されています。

法人税法施行令第69条4項(一部省略)

株主総会等の決議により、役員の職務につき同号の定めをした場合における当該決議をした日から一月を経過する日(同日が当該開始の日の属する会計期間開始の日から四月を経過する日後である場合には当該四月経過日とする。)

つまり、届出期限は、次の①と②のいずれか早い日ということになります。

 ①「決議をした日から1月を経過する日」
 ②「四月経過日」

  ※「四月経過日」=「会計期間開始の日から4月を経過する日」です。

この場合に、3月決算法人で株主総会が5月28日の場合を考えてみましょう。

決議をした日から1月を経過する日

まず①については、決議をした日=株主総会(5月28日)だとすると、「5月28日から1月を経過する日」になります。

上記の考え方によると「5月28日から1か月の期間が満了する日」ですので、6月27日となります。

四月経過日

②については、会計期間開始の日が4月1日で「4月を経過する日」ですので、同じ考え方で「4月1日から4か月の期間が満了する日」で7月31日となります。

つまり、①と②のいずれか早い日となると、届出期限は6月27日となりますね。

・・・いやいや違いますよ、と思われた方。その通りです。②は合っていますが、①は違いますね。正しくは6月28日になります。

5月28日から1月を経過する日が6月28日? え、それは「1月を経過した」では...?

そう思う方もいらっしゃるのではないでしょうか?私自身も勉強したての頃はそう思いました。

当然ながらそういうわけではなく、ここには国税通則法による規定が適用されているのです。

初日不算入の原則

国税に共通するルールを定めた国税通則法には下記のような規定があります。

国税通則法第十条(期間の計算及び期限の特例)

第十条 国税に関する法律において日、月又は年をもつて定める期間の計算は、次に定めるところによる。

一 期間の初日は、算入しない。ただし、その期間が午前零時から始まるとき、又は国税に関する法律に別段の定めがあるときは、この限りでない。

(以下省略)

上記の規定では「期間の初日は、算入しない」とあります。つまり、期間の最初の日(=株主総会があった5月28日)はカウントせず、その翌日(5月29日)から計算しますよ、ということになります。

そのため正確には、「5月29日から1月を経過する日」となりますので、①は6月28日となります。

なぜこのような規定が設けられているかといいますと、公平性を保つためです。

極端な例では、仮に初日を計算に含める場合、5月28日の午前0時に株主総会を行った会社と、5月28日の23時59分に決議を行った会社とでは、期限がほぼ1日違ってくることとなります。

その日の何時に行ったかによって差が出ないように初日は不算入としているわけです。

では②の「会計期間開始の日から4月を経過する日」は?と疑問に思われる方もいるかもしれません。こちらについては但し書き以下を読むと解決します。

ただし、その期間が午前零時から始まるとき、又は国税に関する法律に別段の定めがあるときは、この限りでない。

つまり、「会計期間開始の日」とはある日の途中から始まるのではなく、午前0時から始まりますので、その場合については初日不算入は適用せず、初日からカウントしますよ、ということです。

午前0時から始まることが決まっていれば公平ですから、初日はカウントしていいということになります。

結論

以上からまとめますと、事前確定届出給与の提出期限は下記のとおりとなります。

決議をした日から1月を経過する日

決議をした日=株主総会(5月28日)から1月を経過する日です。

決議をした人という起算日は初日不算入が適用されるため、翌日の5月29日から1月を経過する日=6月28日になります。

四月経過日(会計期間開始の日から4月を経過する日)

会計期間開始の日が4月1日で、初日は算入されるため4月を経過する日は7月31日となります。

①と②のいずれか早い日ですので、6月28日が提出期限となります。

まとめ

結論的には、株主総会等の決議をした日の翌月応当日と覚えていただければ大丈夫です。

ただその裏側には意外と複雑な日付のカウントの仕方がありました。

たかが日付ですが、1日違うだけで適用の有無にかかわりますので、気を付けましょう!

(補足) 届出期限が休日の場合は?

事前確定届出給与の届出期限が休日の場合にはどうなるのか、という点については、先ほどの国税通則法第10条の2項に記載されています。

国税通則法第10条(期間の計算及び期限の特例)

第十条 国税に関する法律において日、月又は年をもつて定める期間の計算は、次に定めるところによる。

 国税に関する法律に定める申告、申請、請求、届出その他書類の提出、通知、納付又は徴収に関する期限(時をもつて定める期限その他の政令で定める期限を除く。)が日曜日国民の祝日に関する法律(昭和二十三年法律第百七十八号)に規定する休日その他一般の休日又は政令で定める日に当たるときは、これらの日の翌日をもつてその期限とみなす。

つまり、届出期限が以下の日であった場合には、それらの日の翌日が期限となります。

  ※ちなみに1月1日は「元日」で祝日扱いです。

土日祝日についてはご存じかと思いますが、年末年始については、12月29日~1月3日が期限が伸びる期間になりますので、念のため確認していただければと思います!

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