【インボイス】取引先への登録番号の通知書・回答依頼書のテンプレートと対応

2022年10月からインボイス制度が始まりますが、制度開始に向けて色々と準備しているところかと思います。

インボイスの概要についてはここでは記載しませんので、詳しくは下記の国税庁HPをご確認いただければと思います。

国税庁インボイス制度特集サイト

今回は、インボイス制度開始による影響と、取引先への対応について記載したいと思います。

インボイスによる影響

インボイス制度の開始により、仕入税額控除できる金額が以下のとおり徐々に制限されていきます。

  1. 2023年10月1日 ~ 2026年9月30日 … 20%制限
  2. 2026年10月1日 ~ 2029年9月30日 … 50%制限
  3. 2029年10月1日以降        … 100%制限

つまり、当初3年間については免税事業者への支払いを変更しない場合、コストが2%上昇することになります。

それぞれの年度の影響額を具体例で見ると以下のようになります。

(単位:千円)

勘定科目 現状 1~3年目 4~6年目 7年目以降
売上高 500,000 500,000 500,000 500,000
人件費 150,000 150,000 150,000 150,000
業務委託費 100,000 101,600 104,000 108,000
  登録あり (20,000 (20,000 (20,000 (20,000
  登録なし (80,000 (81,600 (84,000 (88,000
その他経費 200,000 201,000 202,500 205,000
  登録あり (150,000 (150,000 (150,000 150,000
  登録なし (50,000 (51,000 (52,500 (55,000
営業利益 50,000 47,400 43,500 37,000
現状との差 0 ▲2,600 ▲6,500 ▲13,000

登録をしていない事業者への支払いに関する仕入税額控除が制限されていきますので、その取引価格を変更しない場合には、徐々にコストが上がっていきます。

上記の例では、1~3年目は利益が260万円減少し、4~6年目は650万円の減少7年目以降は1,300万円も減少します。

そのため、制度が始まってどのくらい影響があるのか、という点は事前に検討をしておく必要があります。

事前に検討しておくべき事項

上記のとおり、インボイス登録をしない事業者への支払いが多い場合にはコストが上がる可能性があります。

これについて、どの程度の取引先がインボイス登録をしないのか、また、その取引先へ年間どの程度支払があるのかというところを試算し、どの程度利益にインパクトがあるのかを検討しておく必要があります。

ただ、取引先への発注額が年間1,000万円を超えていれば相手方が課税事業者ということはわかりますが、1,000万円以下であれば課税事業者かどうかは分かりません。そのため、そのような取引先については、インボイスに登録するかどうかの確認がしづらいという面もあります。

その確認を少しでもしやすくするように、こちら側の登録番号を通知しつつ、取引先の登録状況を確認できるようなテンプレートを作成しました。テンプレートはこのページの一番下からダウンロード可能です。

皆さまの会社の状況に合わせて随時修正していただければと思いますが、少しでも参考になれば幸いです。

登録しない事業者への価格交渉の是非について

インボイス制度に登録しない事業者が多く、コストが相当程度上昇する場合には、登録しない事業者との取引条件の見直しを行うことも場合によっては必要となってきます。ただし、この場合には独占禁止法や下請法などの各種法律に抵触しないように留意する必要があります。

公正取引委員会の「免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A」のQ7で、取引条件の見直しについては以下のように示されています。(一部抜粋)

仕入先である免税事業者との取引について、インボイス制度の実施を契機として取引条件を見直すことを検討していますが、独占禁止法などの上ではどのような行為が問題となりますか。

 事業者がどのような条件で取引するかについては、基本的に、取引当事者間の自主的な判断に委ねられるものですが、免税事業者等の小規模事業者は、売上先の事業者との間で取引条件について情報量や交渉力の面で格差があり、取引条件が一方的に不利になりやすい場合も想定されます。
 自己の取引上の地位が相手方に優越している一方の当事者が、取引の相手方に対し、その地位を利用して、正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることは、優越的地位の濫用として、独占禁止法上問題となるおそれがあります。
 仕入先である免税事業者との取引について、インボイス制度の実施を契機として取引条件を見直すことそれ自体が、直ちに問題となるものではありませんが、見直しに当たっては、「優越的地位の濫用」に該当する行為を行わないよう注意が必要です。
 以下では、インボイス制度の実施を契機として、免税事業者と取引を行う事業者がその取引条件を見直す場合に、優越的地位の濫用として問題となるおそれがある行為であるかについて、行為類型ごとにその考え方を示します。
 また、以下に記載する行為類型のうち、下請法の規制の対象となるものについては、その考え方を明らかにします。下請法と独占禁止法のいずれも適用可能な行為については、通常、下請法が適用されます。なお、以下に記載する行為類型のうち、建設業を営む者が業として請け負う建設工事の請負契約については、下請法ではなく、建設業法が適用されますので、建設業法の規制の対象となる場合についても、その考え方を明らかにします。

1 取引対価の引下げ

 取引上優越した地位にある事業者(買手)が、インボイス制度の実施後の免税事業者との取引において、仕入税額控除ができないことを理由に、免税事業者に対して取引価格の引下げを要請し、取引価格の再交渉において、仕入税額控除が制限される分について、免税事業者の仕入れや諸経費の支払いに係る消費税の負担をも考慮した上で、双方納得の上で取引価格を設定すれば、結果的に取引価格が引き下げられたとしても、独占禁止法上問題となるものではありません


 しかし、再交渉が形式的なものにすぎず、仕入側の事業者(買手)の都合のみで著しく低い価格を設定し、免税事業者が負担していた消費税額も払えないような価格を設定した場合には、優越的地位の濫用として、独占禁止法上問題となります。
 また、取引上優越した地位にある事業者(買手)からの要請に応じて仕入先が免税事業者から課税事業者となった場合であって、その際、仕入先が納税義務を負うこととなる消費税分を勘案した取引価格の交渉が形式的なものにすぎず、著しく低い取引価格を設定した場合についても同様です。

 なお、下請法の規制の対象となる場合で、事業者(買手)が免税事業者である仕入先に対して、仕入先の責めに帰すべき理由がないのに、発注時に定めた下請代金の額を減じた場合には、下請法第4条第1項第3号で禁止されている下請代金の減額として問題となります。この場合において、仕入先が免税事業者であることは、仕入先の責めに帰すべき理由には当たりません

 また、下請法の規制の対象となる場合で、事業者(買手)が免税事業者である仕入先に対して、給付の内容と同種又は類似の内容の給付に対して通常支払われる対価に比べて、免税事業者が負担していた消費税額も払えないような下請代金など、著しく低い下請代金の額を不当に定めた場合には、下請法第4条第1項第5号で禁止されている買いたたきとして問題となります。
 下請法の規制の対象となる場合で、事業者(買手)からの要請に応じて仕入先が免税事業者から課税事業者となった場合であって、給付の内容と同種又は類似の内容の給付に対して通常支払われる対価に比べて著しく低い下請代金の額を不当に定めた場合についても、同様です。

(以下、省略)

この部分を簡単にまとめると、以下のようになります。なお、下請法の対象となる取引は公正取引委員会のコチラのサイトでご確認ください。

下請法の対象となる場合ですでに契約を行っている場合

登録しないことを理由に、代金の一部を減額する行為 → 下請法違反となる可能性があります。

下請法の対象となる取引を新たに契約する場合

登録しないことを理由に、消費税額を支払わないという条件を一方的に提示した → 下請法違反となる可能性があります。

下請法の対象とならない場合

インボイス事業者にならなければ消費税分は支払えない、などと一方的に要請した → 独占禁止法上問題となる可能性があります。

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