【消費税】海外クラウドサービスの税区分まとめ

IT企業にかかわらず、最近はクラウドサービスを利用する企業が増えています。

国内企業のサービスであれば税処理は分かりやすいのですが、海外企業が運営するクラウドサービスは確認が難しい場合もあります。

そのため今回は、判断しづらい海外クラウドサービスの消費税区分についてまとめていきたいと思います。

海外クラウドサービスの消費税判定

まず、平成27年度税制改正によりインターネット等を介して行われる役務の提供(クラウドサービスなど)については「電気通信利用役務の提供」に位置付けられ、その内外判定が役務の提供を行う者の事務所等所在地から、役務の提供を受ける者の住所等に変更されました。

条文上では以下のように規定されています。

消費税法第4条(課税の対象)

国内において事業者が行つた資産の譲渡等(特定資産の譲渡等(注)に該当するものを除く。第三項において同じ。)及び特定仕入れ(事業として他の者から受けた特定資産の譲渡等をいう。以下この章において同じ。)には、この法律により、消費税を課する。

 保税地域から引き取られる外国貨物には、この法律により、消費税を課する。

 資産の譲渡等が国内において行われたかどうかの判定は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める場所が国内にあるかどうかにより行うものとする。ただし、第三号に掲げる場合において、同号に定める場所がないときは、当該資産の譲渡等は国内以外の地域で行われたものとする。

(省略)

二 役務の提供である場合(次号に掲げる場合を除く。) 当該役務の提供が行われた場所(当該役務の提供が国際運輸、国際通信その他の役務の提供で当該役務の提供が行われた場所が明らかでないものとして政令で定めるものである場合には、政令で定める場所)

 電気通信利用役務の提供である場合 当該電気通信利用役務の提供を受ける者の住所若しくは居所(現在まで引き続いて一年以上居住する場所をいう。)又は本店若しくは主たる事務所の所在地

 特定仕入れが国内において行われたかどうかの判定は、当該特定仕入れを行つた事業者が、当該特定仕入れとして他の者から受けた役務の提供につき、前項第二号又は第三号に定める場所が国内にあるかどうかにより行うものとする。

(注)特定資産の譲渡等 … 事業者向け電気通信利用役務の提供及び特定役務の提供

上記の3項又は4項のとおり、電気通信利用役務の提供の内外判定は、役務の提供を受ける者の本店若しくは主たる事務所の所在地となりました。

そのため、今までは海外企業が行うインターネットを通じたクラウドサービスは国外取引として課税対象外でしたが、改正後は国内取引になり、課税の対象となります。

なお、非居住者に対する役務の提供についての輸出免税の取扱いで「外国法人に対する役務の提供であっても、外国法人が国内に支店、出張所等の施設を有する場合には国内の支店、出張所等を経由して役務の提供を行ったものとして課税の対象とする」という論点があります。

この国内の支店、出張所等を経由して役務の提供を行ったものとして課税の対象とするという考え方で電気通信利用役務の提供の内外判定も行うのではないか?と思われる方もいるかもしれません。

ここで注意していただきたいのは、電気通信利用役務の提供の内外判定は、あくまでも「本店若しくは主たる事務所の所在地」で判定するということです。

つまり、日本に支店はあるが本店は海外にある会社に対して電気通信利用役務の提供を行った場合、日本支店を通して役務の提供を行うと考えて輸出免税と判断するのではなく、支店は関係なく本店が海外にあるため国外取引になり課税対象外になる、という取扱いとなります。

● ポイント ●

電気通信利用役務の提供の内外判定は、日本に支店があるかどうかにかかわらず、本店又は主たる事務所の所在地が海外にあるかどうかで判定を行う。

改正による仕入税額控除への影響

電気通信利用役務の提供の内外判定が改正されたことにより、課税方式・仕入税額控除についても新しい取扱いが導入されました。

まず、電気通信利用役務の提供については、「事業者向け電気通信利用役務の提供」と、それ以外のもの(便宜的に「消費者向け電気通信利用役務の提供」と言われます)に区分されます。

それぞれは以下のような取扱いとなります。

  •  事業者向け電気通信利用役務の提供 ⇒ リバースチャージ方式
  •  消費者向け電気通信利用役務の提供 ⇒ 登録国外事業者制度

なお、事業者向け・消費者向けの区分については、以下の通達に記載されています。

消費税法基本通達5-8-4(事業者向け電気通信利用役務の提供)

事業者向け電気通信利用役務の提供とは、国外事業者が行う電気通信利用役務の提供で、その役務の性質又は当該役務の提供に係る取引条件等から当該役務の提供を受ける者が通常事業者に限られるものをいうのであるから、例えば、次に掲げるようなものが該当する。

(1) インターネットのウエブサイト上への広告の掲載のようにその役務の性質から通常事業者向けであることが客観的に明らかなもの

(2) 役務の提供を受ける事業者に応じて、各事業者との間で個別に取引内容を取り決めて締結した契約に基づき行われる電気通信利用役務の提供で、契約において役務の提供を受ける事業者が事業として利用することが明らかなもの

(注) 消費者に対しても広く提供されるような、インターネットを介して行う電子書籍・音楽の配信又は各種ソフトウエアやゲームを利用させるなどの役務の提供は、インターネットのウエブサイト上に掲載した規約等で事業者のみを対象とするものであることを明示していたとしても、消費者からの申込みが行われ、その申込みを事実上制限できないものについては、その取引条件等からは事業者向け電気通信利用役務の提供に該当しないのであるから留意する。

つまり、事業者に限られているものは事業者向けそれ以外(消費者も申し込み等が出来るもの)が消費者向けとなります。

なお「事業者向け電気通信利用役務の提供」を行う国外事業者は、「事業者向け電気通信利用役務の提供」を行うに際して、あらかじめ、当該取引が「リバースチャージ方式」の対象である(役務の提供を受ける事業者において、「特定課税仕入れ」として消費税を納める義務がある)旨の表示を行う義務があります

参考として、twitter広告ではこのような表示がされます。

通常は相手方の表示に従って処理すればいいのですが、リバースチャージである旨を表示しない事業者もいる可能性があります。仮に表示されていないとしてもリバースチャージの対象となることには変わりませんので、留意する必要があります。

リバースチャージ方式

事業者向け電気通信利用役務の提供を受けた事業者は、その支払い(特定課税仕入れ)について、申告・納税の義務が課されるとともに、仕入税額控除の対象とすることができます。(詳細は割愛します)

ただし、当面の間は課税売上割合が95%以上である事業者はこれらを考慮する必要はありません。その代わりにその支払いに関する仕入税額控除も出来ません。

つまり、ほとんどの会社では課税対象外で処理することとなります。

登録国外事業者制度

消費者向け電気通信利用役務の提供を受けた事業者については、その役務提供をした国外事業者が登録国外事業者名簿に登録を受けている場合にのみ、その支払いについて仕入税額控除が可能となります。

そのため登録国外事業者名簿を確認し、そこに記載があれば課税仕入として処理し、記載がなければ課税対象外で処理することとなります。

海外クラウドサービス一覧と税区分

最後に、よく使われるクラウドサービスを中心に消費税の取扱いをまとめました。

サービス名 サービス提供者 本店所在地 税区分 備考
Slack Slack Technologies Limited アイルランド 課税仕入 登録国外事業者(No.97)
GitHub GitHub,Inc アメリカ 課税仕入 登録国外事業者(No.65)
Dropbox DROPBOX INTERNATIONAL UNLIMITED COMPANY アイルランド 課税仕入 登録国外事業者(No.18)
AWS Amazon web servise Inc. アメリカ 課税仕入 登録国外事業者(No.4)
LinkedIn LINKEDIN SINGAPORE PTE. LTD シンガポール 課税仕入 登録国外事業者(No.81)
DigitalOcean DigitalOcean, LLC アメリカ 課税仕入 登録国外事業者(No.119)
Atlassian Atlassian Pty Ltd オーストラリア 課税仕入 登録国外事業者(No.13)
Vimeo Vimeo, Inc. アメリカ 課税仕入 登録国外事業者(No.59)
Adobe Adobe Systems Software Ireland Limited アイルランド 課税仕入 登録国外事業者(No.2)
Zoom Zoom Video Communications, Inc. アメリカ 課税仕入 登録国外事業者(No.98)
Bugsnag Bugsnag Inc. アメリカ 対象外  
Elasticsearch Elasticsearch, Inc. ノルウェー 対象外  
shutterstock Shutterstock, Inc アメリカ 対象外  
circleci Circle Internet Services, Inc. アメリカ 対象外  
MAILCHIMP The Rocket Science Group, LLC アメリカ 対象外  
Figma Figma,Inc アメリカ 対象外
課税仕入
登録国外事業者(No.155)
R5.6.30に登録
artlist Artlist Ltd イスラエル 対象外  
ASANA Asana, Inc. アメリカ 対象外  
imgix Zebrafish Labs, Inc. アメリカ 対象外  
Google広告 Google合同会社 日本 課税仕入 国内取引
Google Cloud Google Cloud Japan合同会社 日本 課税仕入 国内取引 
Google Workspace Google Asia Pacific Pte. Ltd. シンガポール 課税仕入 登録国外事業者(No.17)
twitter Twitter, Inc アメリカ 対象外 リバースチャージ
facebook Meta Platforms, Inc. アメリカ 対象外 リバースチャージ
instagram Meta Platforms, Inc. アメリカ 対象外 リバースチャージ
paypal PayPal Holdings Inc. アメリカ 対象外 リバースチャージ
Notion Notion Labs, Inc. アメリカ 対象外 リバースチャージ

なお、こちらは2022年10月13日現在の取扱いをまとめております。

実際には最新の登録状況を確認し、顧問税理士に相談の上、処理を進めていただければと思います。

また、来年に迫ってきているインボイスへの対応についてはコチラを参考にしてください!

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