クラウドサービスの運営会社への支払時の源泉徴収の有無について
クラウドサービスやココナラなどのクラウドソーシングサービスを利用する事も増えてきました。
これらのサービスは発注者とワーカーをマッチングさせるもので、サービスは運営会社からではなくワーカーから発注者に対して行われますが、その代金については運営会社に対して支払います。
その運営会社に支払う際に源泉徴収が必要なケースがあるということはご存じでしょうか?
今回は、クラウドソーシングサービスの運営会社への支払いに対する源泉徴収についてまとめていきます。
源泉徴収制度とは
源泉徴収制度とは、給与を支給する際や、個人に対して特定の報酬を支払う際などに、支払う側が一旦所得税を預かり、それを国に納付する制度です。
支払いを受けた側は、給与であれば年末調整、事業であれば確定申告を行う事で年税額を計算し、その年税額と源泉徴収されていた金額との差額を精算(納付又は還付)します。
つまり、源泉徴収は年間の所得税を概算で前払いしているような制度です。
なお、ここでポイントとなるのは、「個人に対して」支払ったときが対象となるということです。これが法人に対して支払っている場合には源泉徴収という論点は出てきません。
支払いを受けた側の人は年末調整や確定申告で精算する訳ですので、源泉徴収の有無に関わらず、年間で支払う所得税は同額になります。
年間の税額が変わらないのであれば源泉徴収しなくてもいいのでは?と思われる方もいるかもしれませんが、そうではありません。
支払う側にとっては源泉徴収は義務となっています。
そのため、源泉徴収をする必要がある場合に源泉徴収を行なっていなかったときは、仮に支払時に源泉徴収していなくとも、支払企業側に源泉所得税の納付義務が生じます。
源泉徴収していない場合
源泉徴収は義務ということですが、源泉徴収する必要があるときに源泉徴収していなかった場合にはどうなるのでしょうか?
この場合には、一旦支払企業側が源泉所得税を立て替えて納付し、後で支払先からその分を回収するということが必要となります。
支払先から源泉税を回収できれば問題ないのですが、もし支払先から立替払いした源泉税を回収出来なければ、支払企業側の負担となってしまいます。
また、源泉所得税について、納付期限までに納付していない場合には不納付加算税というペナルティーが付きます。
不納付加算税は、納付が遅れた源泉所得税の10%(自主納付の場合には5%)です。
これは支払先ではなく、支払企業側が負担すべきものとなりますので、支払先に負担を求めることはできず、支払企業側のコストとなってしまいます。
このように、源泉徴収もれは負担が大きくなってしまうことがあるため注意が必要です。
運営会社への支払時の源泉徴収の有無
それでは本題に入ります。
最初に、法人への支払いについては、源泉徴収の対象とはならないということを書かせていただきました。となると、このような疑問が生じると思います。
クラウドソーシングサービスの運営会社が法人であれば源泉徴収する必要がないのでは?
これについては私も当初はそのように考えていました。
しかし、実際は運営会社が法人でその法人に対して支払ったとしても、源泉徴収する必要がある可能性があります。(理由は後述します)
ここでは大手クラウドソーシングサービスの運営会社の取扱いについて見ていきます。
クラウドワークスの場合
クラウドワークスは以下のような取扱いとなっています。
【クライアント】源泉徴収について
源泉徴収が必要な契約に関しては、クライアントに源泉徴収をおこなう義務があります。源泉徴収をおこなう必要がある場合、クライアントとワーカー間でご相談の上、契約時に源泉徴収の設定をおこなってください。
※当サービスはクライアントとワーカーの間で二者間契約を締結いただいており、当事者ではない弊社からは源泉徴収をおこなっていません
※源泉徴収の必要の有無については、税理士や最寄りの税務署にご確認ください
つまり、クライアント(発注者)とワーカー(受注者)の直接契約となり、クラウドワークスはそのプラットフォームの提供をしているだけ、という考え方になります。
報酬の支払いに関しても「クラウドワークスは報酬を代理受領しているだけであるため、源泉徴収についてはクライアント側で行ってください」ということになります。
こちらは利用規約第6条において記載されています。
第6条 本サービスの内容について
1. 弊社は、本サービスを通じて、業務委託契約を締結し業務を遂行するためのツール及びプラットフォームの提供を行います。
2. 本サービスは、クライアントとワーカーが直接業務委託契約を締結することを目的とするものであり、弊社は本サイト上で締結される本取引の当事者とはなりません。
3. 本取引に基づくクライアントからワーカーに対する報酬の支払事務は、弊社がワーカーに代わり当該報酬を受領し、それを弊社がワーカーに引渡すことにより行われるものとします。ワーカーと弊社の間には代理受領契約が成立するものとし、当該契約に基づき、ワーカーは弊社に対して、クライアントに対して有する報酬請求権の代理受領権を授与するものとします。
(クラウドワークス 利用規約より抜粋)
そのため、報酬をクラウドワークスに対して支払ったとしても、ワーカーが個人であり、所得税法204条に規定する報酬に該当すれば、源泉徴収する必要がりますので注意が必要です。
源泉徴収が必要な報酬かどうかはこちらも参考にしてください。
ココナラの場合
ココナラの場合も、クラウドワークスと同様に、下記のとおり支払者側に源泉徴収義務が生じます。
第12条 (支払方法と支払時期)
6. 利用会員は自己の責任において税務処理を行うものとします。購入者に源泉徴収義務が生ずる場合には、購入者と出品者は源泉徴収額控除後の金額を支払う旨合意するものとし、購入者は、第1項にかかわらず、出品者と合意した金額を当社の定める方法により支払う義務を負うものとします。
出所:ココナラ 利用規約
ランサーズの場合
ランサーズの場合も、下記のとおり支払者側に源泉徴収義務が生じます。
第17条 取引における法令遵守
1(2) 会員間取引によってランサーに支払われる報酬につきクライアントが源泉徴収をする義務があるとき、クライアントは、源泉徴収税の納付、支払調書の交付等の義務を履行するものとします。
出所:ランサーズ 利用規約
まとめ
以上、クラウドソーシングサービスの運営会社への支払いの源泉徴収についてまとめました。
いずれの会社も、発注者と受注者の直接契約であり、運営会社は報酬を代理受領しているだけであるため、源泉徴収義務は発注者側にあるという考え方になっています。
なお、仮に発注者と運営会社が契約し、運営会社と受注者が契約するような3者間取引となる場合には、源泉徴収義務は運営会社に生じます。
このようなサービスを利用する場合には、利用規約やよくあるお問い合わせなどで事前に確認するようにして頂ければと思います。
また、相手方が小規模な事業者であれば、インボイスに登録しているかどうかの確認も重要となってきます。
インボイスについてはこちらの記事も参考にしてください。