過去に取得して残っている100万円未満の美術品等も減価償却が可能!?【平成27年以降】

減価償却資産については、「時の経過によりその価値の減少しないものを除く」とされています。(法人税法施行令第13条

そのため、時の経過により価値が減少しない資産である土地は減価償却資産には該当しません。

一方、微妙なのが絵画などの美術品です。普通の絵画であれば古くなれば価値は落ちますが、著名な作者の絵画であれば時の経過によりむしろ価値が上がっていくものもあります。

今回は、その美術品についての取扱いについてまとめていきたいと思います。

従前の通達による取扱い

従前の通達では「時の経過により価値が減少するかどうか」つまり、減価償却資産に該当するかどうかは、以下の点により判断するものとされていました。

  • 美術関係の年鑑等に登載されている作者の制作に係る作品であるか
  • 取得価額が20万円以上(絵画については号あたり2万円以上)であるか

ただし、年鑑等は複数存在しており、それぞれの掲載基準が異なるのではないか?20万円という金額基準は低すぎるのではないか?という指摘があったため、改めて専門家等の意見を参考に、平成27年に通達の改正が行われました。

平成27年1月1日以降の取扱い

改正後の通達は以下のとおりとなっています。

法人税法基本通達7-1-1(美術品等についての減価償却資産の判定)

「時の経過によりその価値の減少しない資産」は減価償却資産に該当しないこととされているが、次に掲げる美術品等は「時の経過によりその価値の減少しない資産」と取り扱う。

(1) 古美術品、古文書、出土品、遺物等のように歴史的価値又は希少価値を有し、代替性のないもの

(2) (1)以外の美術品等で、取得価額が1点100万円以上であるもの(時の経過によりその価値が減少することが明らかなものを除く。)

(注) 
1 時の経過によりその価値が減少することが明らかなものには、例えば、会館のロビーや葬祭場のホールのような不特定多数の者が利用する場所の装飾用や展示用(有料で公開するものを除く。)として法人が取得するもののうち、移設することが困難で当該用途にのみ使用されることが明らかなものであり、かつ、他の用途に転用すると仮定した場合にその設置状況や使用状況から見て美術品等としての市場価値が見込まれないものが含まれる。

2 取得価額が1点100万円未満であるもの(時の経過によりその価値が減少しないことが明らかなものを除く。)は減価償却資産と取り扱う。

上記のとおり、従前では20万円以上とされていた基準が、改正後においては100万円以上に改正されました。

そのため、100万円以上するような高価な美術品でない限りは、減価償却資産として減価償却費の計上が可能となりました。

100万円以上の美術品で減価償却が可能なもの

1点当たりの取得価額100万円以上であったとしても、時の経過によりその価値が減少することが明らかなものは減価償却資産に該当します。

この「時の経過によりその価値が減少することが明らかなもの」は、以下のすべてを満たすものが該当します。(上記通達の注書き)

  • 会館のロビーや葬祭場のホールのような、不特定多数の者が利用する場所の装飾用や展示用であること
  • 展示用は有料で公開するものではないこと
  • 移設することが困難で当該用途にのみ使用されることが明らかなものであること
  • 他の用途に転用すると仮定した場合に、その設置状況や使用状況から見て美術品等としての市場価値が見込まれないものであること

これらのすべての要件を満たすものについては、たとえ取得価額が100万円を超えたとしても、減価償却資産に該当し、減価償却が可能です。

平成27年1月1日より前に取得した美術品の取扱い

この通達の改正が行われる前に取得し、20万円以上であったために減価償却していなかった資産については、平成27年1月1日以降に最初に開始した事業年度から減価償却を行うことが可能となります。

つまり、平成27年1月1日において、非減価償却資産から減価償却資産へ資産区分が変更されることになります。

その場合、償却方法はどうなるのでしょうか?

償却方法については、美術品等を実際に取得した日に応じた償却方法(旧定額・定率法、250%定率法、200%定率法)を取ることが原則となりますが、通達が改正された平成27年1月1日に取得したものとみなして定額法・200%定率法を採用することも可能です。

美術品等の法定耐用年数

減価償却資産に該当する美術品等の法定耐用年数は、構造や材質に応じて判定することになります。例えば、工具器具備品の室内装飾品に該当する場合には次のようになります。

区分 耐用年数 例示
室内装飾品のうち主として金属製のもの 15年 金属製の彫刻
室内装飾品のうちその他のもの 8年 絵画、陶磁器、彫刻(金属製以外)

まとめ

以上、美術品等の減価償却についてまとめました。

従前と取扱いが異なっているため、取得時は金額基準で非減価償却資産として償却しておらず、今もそのまま資産として残っているものがある可能性もあります

一度、固定資産台帳を見直し、美術品等で減価償却出来るものがないか、確認してみてはいかがでしょうか。

参考:美術品等についての減価償却資産の判定に関するQ&A(国税庁HPより)

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