一括償却資産を除却や売却した場合の税務上の取扱い

減価償却資産を取得した場合に、取得価額が10万円以上20万円未満の資産については一括償却資産として3年間で償却する方法を選択することが可能です。

この一括償却資産として取扱いをした資産を除却した場合、税務上どのように処理をするのでしょうか。

今回はこの一括償却資産を除却した場合の税務処理についてまとめていきたいと思います。

一括償却資産とは

一括償却資産とは、法人税法施行令において下記のとおり規定されています。

法人税法施行令第133条の2(一括償却資産の損金算入)

内国法人が各事業年度において減価償却資産で取得価額が二十万円未満であるものを事業の用に供した場合において、その内国法人が一括償却資産の取得価額の合計額を当該事業年度以後の各事業年度の費用の額又は損失の額とする方法を選定したときは、当該一括償却資産につき当該事業年度以後の各事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入する金額は、その内国法人が当該一括償却資産の全部又は一部につき損金経理をした金額のうち、当該一括償却資産に係る一括償却対象額を三十六で除しこれに当該事業年度の月数を乗じて計算した金額に達するまでの金額とする。

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つまり、取得価額が20万円未満の減価償却資産で一括償却資産として償却することを選択した場合、損金経理した金額のうち、下記の金額を上限に損金算入できるというものです。

一括償却資産の合計額 ÷ 36 × 事業年度の月数

上記のとおり、損金算入される金額は一括償却資産の合計額を36ヵ月で割って、その事業年度の月数を掛けて求めた金額です。

ここで注意点したいのは、事業年度の中途において事業供用したとしても、事業供用した月から期末までの月数分を償却するのではなく、その事業年度の月数分(通常であれば12ヵ月分を償却する、ということです。

そのため、12ヵ月の通常の事業年度であれば、一括償却資産を選択した資産については、取得した事業年度から1/3ずつを3年間で均等償却していくこととなります。

一括償却資産を除却した場合の取扱い

一括償却資産は1/3ずつを3年で償却するというということですが、一括償却資産を除却した場合の取扱いはどのようになるのでしょうか。

通常の固定資産であれば、除却すれば除却直前の帳簿価額を損失として計上することができますが、一括償却資産については除却をしたとしても帳簿価額を損金の額に計上することはできず、従前どおり取得価額の1/3ずつが損金の額に算入されます

こちらは下記の通達においても触れられています。

法人税法基本通達7-1-13(一括償却資産につき滅失等があった場合の取扱い)

法人が令第133条の2第1項《一括償却資産の損金算入》に規定する一括償却資産につき同項の規定の適用を受けている場合には、その一括償却資産を事業の用に供した事業年度後の各事業年度においてその全部又は一部につき滅失、除却等の事実が生じたときであっても、当該各事業年度においてその一括償却資産につき損金の額に算入される金額は、同項の規定に従い計算される損金算入限度額に達するまでの金額となることに留意する。

つまり、一括償却資産については資産の状況にかかわらず、一括償却資産の合計額 ÷ 36 × 事業年度の月数 が損金算入限度額となります。

一括償却資産を売却した場合の仕訳例

一括償却資産を売却した場合はどうなるのでしょうか。

こちらは一括償却資産を売却した場合の実例で見ていきたいと思います。

  • 一括償却資産の取得価額:90
  • 一括償却資産の期末帳簿:30
  • 一括償却資産の売却価額:44
  • 譲渡日:期末日

この場合、通常の固定資産であれば以下のような仕訳になります。

借方勘定科目 借方金額 貸方勘定科目 貸方金額
現預金 44 固定資産 30
    固定資産売却益 10
    仮受消費税 4

しかし、一括償却資産については、除却や売却時に処理を行わないため、一括償却資産の減少は認識せず、単に収益だけが計上されます。

【正しい仕訳】

借方勘定科目 借方金額 貸方勘定科目 貸方金額
現預金 44 雑収入 40
    仮受消費税 4

なお、当期末簿価の30については、翌期において資産としては存在しないのにも関わらず、償却費を計上することとなります。

一括償却資産にした時点で、資産としての認識はせずに「単に3年で償却されるもの」として、売却した資産とは別物と考えていただければと思います。

まとめ

今回は一括償却資産についてまとめました。

通常の固定資産とは別物となりますので、注意が必要です。また、一括償却資産にすると償却資産税の対象外となりますので、うまく一括償却資産の特例を適用して税額が少なくなるようにしましょう。

償却資産税については、こちらの記事も参考にしていただければと思います。

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