生前贈与加算の対象が3年から7年に延長する方針/早めの対策が必要になります

相続税の生前贈与加算の期間が現行の3年より7年に延長される方針を固めたとのニュースが入ってきましたね。

これにより、今までは相続税の計算に含まれていなかった4~7年前に贈与した財産について、相続税が課税されるようになる予定です。

正式には税制改正大綱において公表されますが、先だってこの内容について確認してみたいと思います。

生前贈与加算とは

生前贈与加算とは、被相続人から相続開始前3年以内に暦年課税による贈与により財産を取得していた場合に、その贈与を受けた財産の価格相続税の課税価格に含めて税額を計算する、という規定です。

通常、生前に贈与を受けた場合には、贈与税が課税されますが、それ以上の課税はありません。ただ、贈与税は相続税の補完税としての役割がありますので、あまりに相続開始時点に近い贈与については、本来の相続税で税額を計算しましょう、というものです。

なお、生前に財産の贈与を受けた場合に、その年に贈与を受けた財産の価額の合計額が贈与税の基礎控除額(110万円)を超えていれば、贈与税を納税することになります。(贈与税について国税庁HP参照

そのため、贈与税と相続税が二重課税とならないよう、3年以内の贈与財産が相続税の課税価格に加算された場合には、贈与時点で納付した贈与税額を相続税の計算上差し引いて税額を計算します。(贈与税額控除)

今回の改正予定の内容

令和4年度の税制改正において改正される予定の内容は、相続税の計算に加算する期間を、相続開始前3年以内から、7年以内に延ばすというものです。

これにより、従前では相続税がかからなかった期間分の贈与財産が、相続税の課税価格に加算されることになるため、結果として相続税額が増えることとなります。

生前贈与は相続税対策としても活用されてきました。財産を多額に持っていて、課されるであろう相続税率が高いと見込まれる場合、相続税率よりも低い税率で贈与をすることで、税率差分が節税となります。

相続税と贈与税の税率

相続税と贈与税の税率については、こちらの記事もご参照ください。

ただし、生前贈与加算された場合には、せっかく低い税率で財産を移せても、結局、相続税の課税価格に加算されるため意味がありません。

今後は、7年間分の贈与が相続税の計算に加算されることになるため、早いうちから計画的に贈与していくことが重要となってきます。

増税となる具体例

具体例で見ていきます。例として下記のような相続があったとします。

  • 相続時点の財産 1億円
  • 生前贈与 毎年110万円を子2名に贈与していた
  • 相続人 子2人

この場合、現行の税法では生前贈与加算される期間は3年ですので、相続税の課税価格に加算される金額は 110万円×3年×2人=660万円 です。

この場合の相続税額は2人で892万円となります。

一方、税制改正により生前贈与加算される期間が7年となった場合、相続税の課税価格に加算される金額は 110万円×7年×2人=1,540万円 となります。

この場合の相続税額は2人で1,068万円となり、176万円も相続税額が増えることになります。このケースでは割合にして何と2割程度の増加です。

(2022.12.19追記)

先週金曜日に発表されました税制改正大綱によりますと、今回延長される部分の期間については、100万円を超える部分の金額のみが生前贈与加算の対象となるようですので、上記の例では、4~7年前分については 110万円 - 100万円 = 10万円部分が生前贈与加算の対象となります。

そのため、生前贈与加算される金額は 110万円×3年×2人+10万円×4年×2人= 740万円です。

相続税の申告をする上での実務上の対応

改正後に生前贈与加算される期間が7年となった場合、相続人へのヒアリングもそうですが、特に被相続人の預金の調査が大切となってきます。

少なくとも被相続人の通帳を7年分取得し、相続人への移動がないか不明な現金出金がないかを確認し、相続人への贈与にあたるものがないかどうかをしっかり検討していく必要があります。また、可能であれば相続人の通帳の確認を合わせて行った方がベターです。

今までは3年間でしたが、それが7年間となるとかなり業務としては大変になりますね。。

ただ、7年も前のこととなると忘れていることもあるかと思いますので、何か大きな出金をした場合には、通帳などにメモしていただくように指導していく必要があるかと思います。

また、生前贈与を行う場合には、今まで以上に早い段階からの検討が必要となってきますので、しっかりと先を見据えた対策を打てるようにしていきましょう。

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