償却資産税の対象は1月1日に所有?それとも事業供用?
地方税に償却資産税というものがあります。
これは固定資産税の一種で、その年の1月1日に所有している償却資産に対して課税される税金です。
この「1月1日に所有」について、文字通り1月1日に「所有」していれば課税されるのか、それとも1月1日に事業供用されている資産に対して課税されるのか、意外と曖昧になっているところもあるかと思います。
今回は償却資産税の対象となる資産について改めて見ていきたいと思います。
償却資産の地方税法上の定義
まず、償却資産税の対象となる償却資産とは何かを見ていきます。
償却資産の定義は地方税法第341条に以下のように規定されています。
地方税法341条(固定資産税に関する用語の意義)
四 償却資産
土地及び家屋以外の事業の用に供することができる資産(鉱業権、漁業権、特許権その他の無形減価償却資産を除く。)でその減価償却額又は減価償却費が法人税法又は所得税法の規定による所得の計算上損金又は必要な経費に算入されるもののうちその取得価額が少額である資産その他の政令で定める資産以外のもの(これに類する資産で法人税又は所得税を課されない者が所有するものを含む。)をいう。
ただし、自動車税の種別割の課税客体である自動車並びに軽自動車税の種別割の課税客体である原動機付自転車、軽自動車、小型特殊自動車及び二輪の小型自動車を除くものとする。
まず、下線を引いた以下のものは償却資産の対象から除外されています。
- 土地及び家屋(①)
- 鉱業権、漁業権、特許権その他の無形減価償却資産(②)
- 取得価額が少額である資産その他の政令で定める資産(③)
- 自動車並びに原動機付自転車、軽自動車、小型特殊自動車及び二輪の小型自動車(④)
①の固定資産税の対象になるものや、④の自動車税又は軽自動車税の対象となるものは2重課税となってしまうため除外されています。
ただし、車両のうち大型特殊自動車(クレーン車やブルドーザーなど)については自動車税の対象とならず、償却資産の対象となるため注意が必要です。
また、②のように無形固定資産も対象外です。
③の少額である資産その他政令で定める資産については、以下のように規定されています。
地方税法施行令第49条(法341条第4号の資産)
ここでいう少額の減価償却資産とは、10万円未満又は使用可能期間が1年以内のものを指します。
つまり、損金の額に算入した10万円未満(又は使用可能期間が1年以内)の資産と、一括償却資産の対象とした資産については、償却資産の対象外となります。
これら①〜④以外の資産については、基本的に償却資産税の対象となります。
建物附属設備の申告の有無
建物付属設備については、家屋に含まれるのか、それとも付属設備として申告をする必要があるのか、判断に迷うところかと思います。
これについては、家屋の所有者が誰かによって取扱いが異なります。
家屋と設備の所有者が同じ場合
家屋を所有している場合の設備については、独立した機器としての性格が強いもの、特定の生産又は業務の用に供されるものなどについては償却資産として取扱い、その他家屋と一体となっているようなものなどについては、家屋に含まれて、固定資産税の対象となります。
東京都の場合、細かい区分表が主税局のホームページに掲載されていますので、そちらも参照してください。
家屋と設備の所有者が異なる場合
所有者が異なる場合、つまり、賃借人側が取り付けた内装工事や附属設備については、賃借人側で償却資産の対象となります。
1月1日に所有しているもの?事業供用しているもの?
償却資産税は、その年の1月1日に所有しているものに対して課税されるということですが、これについては「所有」していれば課税されるのか、もしくは所有して「事業供用されているもの」についてのみ課税されるのか、どちらでしょうか。
これを確認するために、ここで改めて条文上の規定を見てみます。
地方税法341条(固定資産税に関する用語の意義)
四 償却資産
土地及び家屋以外の事業の用に供することができる資産(鉱業権、漁業権、特許権その他の無形減価償却資産を除く。)でその減価償却額又は減価償却費が法人税法又は所得税法の規定による所得の計算上損金又は必要な経費に算入されるもののうちその取得価額が少額である資産その他の政令で定める資産以外のもの(これに類する資産で法人税又は所得税を課されない者が所有するものを含む。)をいう。
条文上では、「有している資産」でもなく「事業の用に供されている資産」でもなく、「事業の用に供することができる資産」とされています。
そのため、1月1日時点で事業の用に供していなくても、事業の用に供すことができる状態であれば、償却資産の対象となります。
例えば、工場や機械などを新設・購入して、1月1日時点ではまだ未稼働であったとしても、稼働できるような状態になっていれば、基本的には償却資産の対象となります。
この事業の用に供することができる状態にあるかどうかは、客観的な事実認定により行うこととされています。具体的には、次のような例に従って判定することになります。(参考:京都市 償却資産の意義に関する取扱要領)
- 工場等における機械等 製品の生産を開始し得る状態になったとき。また試運転を実施する資産については、試運転が完了し、事業の目的に供し得る状態に至ったとき
- 一貫作業系統を有する工場施設 全てが完成し、操業を開始できる状態になったとき。なお、一部が完成しても他の一部が未完で操業することができない状態では事業の用に供することができる状態とは言えないが、その一部だけでも操業を開始しているようであれば、その一部は操業できる状態になったとき。
- 使用について許認可を必要とする資産 使用に許認可を必要とするものであれば、許認可があった日
実務上は、ここまで微妙なケースはないかもしれませんが、知識としては知っておく必要はあるかと思います。